住宅の構造へのこだわり基礎講座 ⑧制震ダンパーの重要性

2025/10/07

こんにちは、木場本圭司です。

普段は住宅の構造、断熱、気密など、性能に係る部分の設計を担当しております。

このブログでは、当社せこ住研の建てる住宅の構造についてのシリーズとして解説していこうと思いますので、これから家づくりを進めていきたい方にぜひ参考にしていただきたいです。

前回の耐震性能を支える2つの耐力壁「筋違い(筋交い)」と「耐力面材」編に続いて、⑧制震ダンパーの重要性編です。


地震の「繰り返し」によって起きるダメージとは

当社の家の強さは、太い柱や梁、バランスよく配置された筋違(すじかい)やモイス、そして耐震金物などさまざまな部材と工夫によって支えられています。

これらの組み合わせによって高い耐震性能を確保していますが、熊本地震のように震度7クラスの地震が複数回起こると、建物には“繰り返しの揺れ”によるダメージが蓄積していきます。見た目には分からなくても、接合部が少しずつ緩み、建物全体の揺れ幅が大きくなってしまうのです。

一度の大地震で倒れなくても、数回にわたる強い揺れによって柱と梁の接合部がわずかにずれたり、金物が緩んだりします。このダメージは目に見えにくいため放置されがちですが、結果的に建物全体の剛性が低下し、次の地震ではより大きく揺れる原因となります。

建物を守る“制震ダンパー”の役割

こうした「繰り返し地震」に備えるために導入されているのが、制震ダンパーです。

制震ダンパーは、地震のエネルギーを吸収して揺れを軽減する装置。数多くの種類が存在しますが、私たちが採用しているのは、信頼性と実績を兼ね備えたTRCダンパーです。

TRCダンパーの仕組み 〜揺れを“熱”に変える〜

地震によって建物が揺れた瞬間に、TRCダンパーが伸び縮みして運動エネルギーを瞬時に吸収し、熱エネルギーへと変換します。たとえるなら、普通のゴムボールは弾ませるとポンポンと跳ね返りますが、TRCダンパーに使われている特殊粘弾性ゴムで作られたボールは弾まずにそのまま止まります。それは、エネルギーを吸収して熱に変える性質があるからです。

100年先まで安心できる、メンテナンスフリーの性能

TRCダンパーに使われている特殊ゴムは、時間経過や温度による性能劣化が非常に少ないことが特徴です。そのため、製造メーカーではなんと「100年間メンテナンスフリー」を謳っています。
つまり、お孫さんの代に巨大地震が来ても効果を発揮してくれるということ。

大切な家を長く守るために。“耐震”に“制震”をプラスすることで、より安心できる住まいが実現します。

まとめ:耐震+制震で、より安心の住まいを

地震に強い家をつくるには、「耐震」だけでなく「制震」という考え方が欠かせません。強い構造体で“耐える”ことに加え、制震ダンパーによって“しなやかに受け流す”ことで、建物はより長く安全に暮らせる家になります。

繰り返しの揺れにもしっかり備え、何十年先も家族を守り続ける安心な住まいを実現していきましょう。

次回もお楽しみに。

このブログを書いた人

木場本 圭司
木場本 圭司

設計(構造・温熱環境)・各種申請・現場監理 / 一級建築士

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