
こんにちは、木場本圭司です。
普段は住宅の構造、断熱、気密など、性能に係る部分の設計を担当しております。
このブログでは、当社せこ住研の建てる住宅の構造についてのシリーズとして解説していこうと思いますので、これから家づくりを進めていきたい方にぜひ参考にしていただきたいです。
前回の⑧制震ダンパーの重要性編に続いて、⑨木材選びからこだわり尽くす家づくり編です。
三重県産の桧と杉でつくる、強くて美しい構造
家の骨格を支える「柱」や「梁」には、建物の強度と耐久性を左右する重要な役割があります。
私たちが採用している柱はすべて三重県産の桧。(時には吉野など、質の良い材が手に入った際には買い付けることもありますが、基本的には三重県のものを使います。)
また、梁もすべて三重県産の杉と桧で構成。これは、植林された杉が山に多く残っている現状を踏まえ、地元の山を健全に保つための取り組みでもあります。
自然乾燥と目利きで、一本一本を丁寧に選定
木材は強度だけでなく、乾燥の状態や反りの有無によって性能が変わります。
私たちは自社倉庫でしっかりと自然乾燥を行い、含水率を整えた状態でプレカット工場に運びます。その際は、設計担当と現場監督が1本1本目で見て選定していきます。



構造計算の数値だけに頼らず、経験と感覚に基づいて梁のサイズや木材の配置を決めるのが私たちのこだわりです。
正直、ここまでやっている工務店はそう多くはないと思います。木材倉庫を持たない工務店も近年では珍しくありません。
ですが、木造での家づくりで最も重要とも言える木材ですから、こだわり尽くすのが工務店の当然の使命だと思って30年前からずっと取り組んでいます。
「構造を丸投げしない」家づくり
住宅業界では、残念ながら間取りやデザインだけを仕上げて、構造設計や木材選定をプレカット工場に丸投げしているケースが少なくありません。
その結果、構造用合板を大量に使用して「これで強くなるだろう」という安易な設計が行われているのが現状です。同業者として、私たちはそうした考え方を非常に残念に感じています。
これまでもたくさん触れてきたので理解いただけているかもしれませんが、私たちは家づくりから合板を極力排除するという姿勢を貫いています。その理由は、合板の製造に使われる接着剤がシックハウス症候群の大きな原因となるからです。多くの合板にはホルムアルデヒドという有害物質が含まれており、これは発がん性があることも分かっています。
私たちは、この物質を使わないことは、家をつくる者としての責任だと考えています。
例えば2階の床を強くする場合、構造用合板を全面に張って釘で留めれば簡単に数値上の剛性を高められます。しかし、私たちは「構造用合板なし」で強い床を実現することに挑戦しています。梁材の構成を工夫し、計算と経験を重ねて十分な耐震性能を確保できるように設計しているのです。
まとめ:木の力を信じ、誠実に家をつくる
見えない部分にこそ、本当の家づくりの姿勢が現れます。
安易な材料や効率的な手法に頼らず、自然素材と職人の目で選んだ木材だけで構造をつくる。
それが、住む人の健康と安全、そして次の世代へ受け継がれる“本物の家”を守るための私たちの使命です。
次回もお楽しみに。
このブログを書いた人