
こんにちは、木場本圭司です。
普段は住宅の構造、断熱、気密など、性能に係る部分の設計を担当しております。
このブログでは、当社せこ住研の建てる住宅の構造についてのシリーズとして解説していこうと思いますので、これから家づくりを進めていきたい方にぜひ参考にしていただきたいです。
前回の⑨木材選びからこだわり尽くす家づくり編に続いて、⑩小屋梁とDSパネルが生み出す強さと快適性編です。
10回にわたる「せこ住研の家づくり」シリーズ、ついに最終回
これまで9回にわたり、「せこ住研の家づくり」で大切にしている考え方や技術についてお伝えしてきました。
構造や断熱、素材の選び方、そして“見えない部分”に込められた職人の想い——。
ひとつひとつのテーマを通して、せこ住研がなぜ“安心して長く暮らせる家”をつくり続けているのか、その理由を感じていただけたのではないでしょうか。
そして今回が、その最終回。
最後のテーマは「小屋梁とDSパネル」。
屋根という“家の帽子”を支える大切な構造と、強さと快適性を両立する仕組みについてご紹介します。
一般的な小屋組みとせこ住研の違い
屋根を支える梁の構造を「小屋組み」と呼びます。
一般的な木造住宅の小屋組みはこのように細かい木材が複雑に組まれた構造になっています。これは、屋根の重さを支えたり、地震や台風などの力を受けても壊れないようにするためです。


一般的な木造住宅はこのような作りになっています。
一方、私たちの家の小屋組みは、それに比べて非常にシンプルな構造かもしれません。
しかし実は、一般的な小屋組みの倍以上の強度を誇っています。
その秘密が、木質構造断熱パネル「DSパネル」にあります。
DSパネルとは 〜強さと断熱性を両立した構造パネル〜
当社ではこの一般的な小屋組みとは異なり、屋根部分にDSパネルという構造パネルを上から乗せるような作り方をします。代わりに、上の写真であったような雲筋交いなどが必要なく、天井裏の部分がとてもシンプルな作りになります。
また屋根下地として設置していくことで、建て方の初期段階から柱や梁が雨に濡れるのを防ぐことができます。


このパネルは、カナダ産のOSB(構造用面材)で断熱材のEPS(発泡成形ポリスチレン)をサンドした構造。まるで「構造」と「断熱」が一体化したような仕組みで、強度と性能を高いレベルで両立しています。
当社では16.4センチの厚さのものを採用しています。
驚くべき強度 〜2.4トンの車が乗っても撓まない〜

DSパネルの強さを示す実験では、5メートル以上のスパンで中間に支えがない状態でも、
なんと2.4トンの自動車を載せても壊れないどころか、ほとんど撓みが見られないほど。
その構造性能の高さは世界的にも認められており、アメリカでは南極基地の建物にも採用された実績があります。
シンプルな構造がもたらす快適な空間
このDSパネルを採用することで、小屋組みをシンプルにできるだけでなく、耐震性能を確保しながら天井裏の空間を有効活用できるようになります。
そのため、ロフトや小屋裏収納なども真夏でも快適に使えるのが大きな特徴。強さと快適性の両立こそ、DSパネルがもたらす価値です。
「合板を使わない」との矛盾は?
「合板を使わない」とこだわっているのに、このDSパネルも合板が使われているのでは?
と疑問に思われた方がいらっしゃったとしたら、さすがこれまでのシリーズを読んでいただけているだけありますね。
おっしゃる通り、このDSパネルには合板が使われています。
ですがご安心ください。私たちが採用しているDSパネルに使われているカナダ産の合板は、日本の基準よりはるかに厳しい環境規制のもとで製造されています。そのため、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドなどの有害物質をほとんど含んでいません。
さらに下のイラストのように、天井から発生する化学物質の摂取量は極めて少ないことも研究で確認されています。つまり、シックハウスのリスクがほぼゼロに近い安全な材料として使用しているのです。

まとめ:シリーズを通して伝えたかったこと
全10章にわたってお届けしてきた「住宅の構造へのこだわり基礎講座」。ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
私たちがこの冊子を通してお伝えしたかったのは、「家づくりとは、形をつくることではなく“想い”を積み重ねること」だということです。
柱の一本、梁の一本、そして目に見えない断熱材や金物に至るまで、すべてに理由があり、そこにはお客様の安心と健康を守りたいという想いが込められています。
今回の小冊子では、完成後には隠れてしまう部分を中心にご説明しました。見た目ではわからない“家の中身”こそが、本当の安心を左右するからです。
阪神淡路大震災の後に建築基準法の耐震基準は大きく改定され、現在の基準をクリアしていれば、ローコスト住宅でも地震で倒壊しない(もちろんダメージは受けますが)水準になっています。しかし、それはあくまで「完成したばかりの新品の状態」での話です。断熱や気密に真剣に取り組んでいない住宅では、壁体内結露(壁の中の結露)が必ずと言っていいほど発生します。その状態が続けば、数年で柱や梁・土台といった構造体が腐り、新品のときにあった耐震性能もほぼゼロになってしまいます。防腐剤などで“腐らない家”をつくることもできますが、それでは薬品まみれの空気の中で暮らす家族の健康を守ることはできません。
耐震性能・断熱性能・耐久性を高くすることは、家づくりにおいて当然のことです。しかし、その方法を安易に簡略化してしまえば、必ずどこかに歪みが生じます。その歪みが「家の不具合」であれば修繕できますが、もしそれが「家族の健康被害」であれば、取り返しのつかないことになります。
だからこそ私たちは、耐震性能・断熱性能・耐久性と、室内の空気環境をセットで考えることを大切にしています。どれか一つでも欠けては、本当の意味で「安心な住まい」とは言えないのです。
時代が変わっても、流行が移り変わっても、私たちは“本当に良い家”をつくるための信念を変えることはありません。見えない部分にこそ真実があり、そこにこだわることが、お客様の「何十年先の幸せ」につながると信じているからです。
これからもせこ住研は、地域の風土と人々の暮らしに寄り添いながら、世代を超えて愛される家づくりを続けていきます。
皆さまの家づくりを考えるうえでの小さな“気づき”や“きっかけ”になれば幸いです。
このブログを書いた人